バイクフレームをオーダーする
PART3 フレームジオメトリ設計
ディスカッションを終えたら、顧客の要望を基にフレームの設計に取り掛かります。
通常、設計図ができあがりメールで送られてくるまでだいたい1-2日要します。
フレーム製作においての設計段階では、まだ実際のフレーム作りは始まっていませんが、新しく生まれるフレームに命を与える、重要な第一ステップです。
「設計図のフレームを冶具の上で正確に再現しなければいけない。一見すれば、スタンダードのフレームデザインを基にして各部の長短をユーザーのサイズに合わせて調節するだけで良い、単純な作業のようにも見える。しかし実際にはフレームを正確に再現するために細部まで調節する必要がある。」
ドリアーノはPRIMAのエンドパーツやチェーンステイを独自のアイデアに基づく『X-Stays』システムを提案をしています。
BBにはペダリング時の膨大なエネルギーが集中します。この力を相殺するために、まずチェーンステイの径、リアエンドの位置を決めた上で、各部の適切な位置取りをします。
ペダリングが生み出すパワーは、フレームで一番の要となるBBに伝達されます。BBへの効果的なパワー伝達は、日々研究が繰り返される課題で、大手メーカーではフレームのプロトタイプを何種類も用意します。
ドリアーノはPRIMAで、X型に屈曲したチェーンステイが可能な限りBBのクランク側に接合されるX-Staysで、ダイレクトでロスの無いパワー伝達を実現しました。
また、独自のチェーンステイに対応し、エンドパーツは彼が設計したものを外部工場に依頼し、金属塊から削り出すワンオフ製作で実現しています。
『X-Stays』を採用したPRIMAは2015年NAHBS(北米ハンドメイドバイシクルショー)で見事、最優秀賞を含むダブルタイトル受賞の栄誉を得ました。
またジオメトリについて、ドリアーノ・デローザはサイクルロードレースの伝説的なビルダーである父(往年の名選手がこぞって彼の作るフレームを求めた逸話が残る)から受け継ぐノウハウがあり、それがドリアーノもまた名高いフレームビルダーたる所以のひとつです。
フレームの設計はCADソフトを用いて行行います。
伝達エネルギー効率とその耐久力に注意を払いながら、各寸法の修正などの作業も容易にできるCADソフトウェアで自転車全体の動きをシミュレートし、フレームの弱い部分をビジュアル化することもできます。
フレーム製造の大部分を海外に委託することの多い昨今、メーカーによってはこのようなソフトウェアを駆使してフレームを設計する真の“フレームビルダー”の不在がささやかれますが、BIXXISでは、もちろん、これらの作業もドリアーノが行っています。
「我々ビルダーはユーザーのリクエストに応じる形でジオメトリを提案している。イタリア人はたいていの場合、体格のバランスが取れており、スタンダードのフレームサイズでだいたい合うが、人によっては脚の長さに合わせてシートチューブを短く、逆に胴長なのでトップチューブを長くする場合がある。もちろん、日本人の身体的特性もイタリア人のそれとは異なる傾向がある」
余談ですが、もしあなたが既にお持ちのバイクが、理論的にはあなたの体形にあっていなくても、実際に乗って自分に合っていれば、乗り慣れたジオメトリサイズを大きく動かすことはなるべく避けたほうが良いかもしれません。その辺の判断はドリアーノに任せましょう。
ジオメトリをデザインし、フレームの設計図が完成するまで、1-2日かかります。
設計図をご覧いただき、疑問点があれば納得がいくまで何度でも、イタリアに連絡を取って説明を求めましょう。
一般のショップでの購入はユーザーが選ぶのはフレームサイズとせいぜいカラーリングぐらいで、ジオメトリについては何も決めることはできませんが、BIXXISのオーダーメイド製作では、最大限のカスタマイズが可能です。
(もちろん、ドリアーノが言うところの“良識”の範囲でのカスタマイズですが…)
設計に満足がいけば製作を承認してください。この段階でオーダーが確定します。いよいよフレーム製作に取り掛かります。
次項では実際のフレーム製作現場を見ていきましょう。