45年に及ぶバイシクルフレームビルダーとしての経験を誇るドリアーノ・デローザは、そのキャリアの大半を占める30年以上の間、TIG溶接によるフレーム作りにこだわり続けてきた。
しかし、その根底にあるのは、父ウーゴから学び受けた自転車作りのノウハウである。 当然ながら、ドリアーノが14歳で父の仕事を手伝い始めてから、経験を積んだ当初十数年間は、自転車フレーム製作と言えば、このEPOPEAのようにクロモリのチューブをラグ(継ぎ手)でつなぎ、ろう付けする以外にはなかった。ドリアーノが得意とするTIG溶接が普及し、彼がこの技術を習得したのは、80年代後半に入ってからのこと。
ドリアーノ・デローザにとって原点回帰ともいえるこのラグドフレームの新作に、彼が与えた名前“EPOPEA”(エポペア)とは、英単語にすれば“EPIC”(エピック)と、いくぶん馴染みの言葉になるが、これは英雄などの偉大な功績・業績を称える物語、叙事詩を意味している。
つまり、EPOPEAを世に出すことで、彼が望むのは、最も尊敬する師匠であり、そして自身がその息子であることを誇りとする、父ウーゴの功績を称えるストーリーを語り継ぐこと。 手作りによるバイシクルフレーム製作や、そこに向けられた職人の魂と情熱、その結果としての質の高いものづくりと言った、父が築き上げ、ドリアーノが学んできたもの、すなわち自身の根幹たる遺産や伝統を継承し、守っていくという彼の決意をより具体的に示している。それこそが、EPOPEAに込められたドリアーノ・デローザのメッセージなのです。